記憶 ―夢幻の森―



ハル…カ…


――ハルカって、誰…?


「……ぇ…。」

僕の頭の中で、

僕の知らない映像が動き出したんだ。



深い森…。
緑の光を降らせる木々。

精霊に仕えし、風が…
その声を運ぶ世界。


僕はその声に誘われて、

七色の花畑の、
一本道を真っ直ぐに進む。


そこで…



――…そこで、

君に逢ったんだ…。



ハルカという…

――「光」に逢ったんだ。



――「『…キース~!!」』

俺の記憶の中で、
ハルカとコンが笑う。


「――…!!」


指先は、

「記憶」へと辿り着く――…



お腹の中の女の子は、
幸せそうに微笑んでいて…。



――…パァ…ンッ!


そんな…
俺にしか聞こえない音がして、


四枚だった羽根の内、

二枚が、
弾け飛んだのだ…。


ハルカ…
ハルカ、君は…。


ハルカの羽根は…、

「生まれつきに二枚」
しかなくて…



俺の「記憶」と引き換えた、


『代償』――…



あぁ…

あぁ、そうなのか…。
そうだったのか…。



俺はユリネさんのお腹の前で、地面を見た。
二人に気付かれない様に、
そっと自分の涙を拭う。


――…有り難う…


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