記憶 ―夢幻の森―
3・出逢い
3・出逢い
この道の示す通りに俺は歩く。
そうする事しか出来なかった。
一つ二つ、花の露の水溜まりを過ぎ、気が付けば花畑の中心にいた。
時たま風が吹くと、
薄白い霧が宙を動く。
足元に咲く花たちが、心地良さそうに揺らめきながら光を帯びる。
赤、黄、紫、白、橙…
幾つもの色が、白い霧の中でグラデーションを描く。
そこへ尻の青い小さな小さな虫たちが、あっちへこっちへと行き交った。
なんと綺麗な場所だろう。
清らか…
きっと、
…俺なんかが居ていい場所じゃない。
幻想的な光景に頬をほころばせながらも、俺の心は闇に沈んでいく。
足は、早くここを抜けようと次第に速くなっていった。
『…る…光…、は…』
虹色に霞む視界の向こうから、風は歌声を運んできた。
…歌…?
その高い幼い声からは、その主が少女だという事を俺に予想させた。
俺は足を止めた。
先を凝視し、耳を澄ませる。