記憶 ―夢幻の森―
未だ…
あの世界で、
俺のやるべき事は残っていたはずだ。
だから、
俺はこの世では目覚めない。
早く…
還らなくては――
仲間を亡くした、
あいつが待ってる…
早く…
早く、早く…
共に国を造ろうと、
「あの日」に誓い合った…
あいつが待ってる…。
早く、
『器』よ、朽ち果てろ。
…そう頭の中で何度も繰り返し、俺はこの誰もいない砂漠を徘徊する。
いつも、独り。
乾いた風が、俺の体に砂を吹き付ける。
俺は、砂避けの白いローブを頭に深く被り直し、その場で一度足を止めた。
あっちは、ラルファ。
こっちは、カオスの泉。
「カオスの泉に行くか…」
そう一人呟いた。
もう、独り言にも慣れたものだ。
ザクザク…と、慣れた砂を踏みしめ歩く。
なんせ、俺の意識が創りあげた世界。
自然と不都合な砂嵐など起こるわけもなく、簡単に泉へと着いた。
岩の壁に囲まれた、緑豊かなオアシス。
いつも通りの細い岩間の道。
自分の体の向きを変えてすり抜ける。