記憶 ―夢幻の森―
なんだか…
妖精…といっても、俺と何ら変わりなく思える。
背丈も、今の俺より少し小さいくらい。
色白に透き通る肌は、この世界独特なのだろうか。
なんせ、日が昇らないわけだからな…。
色素の薄い茶色い髪は、柔らかに波を描き肩まで伸びている。
そして、同じ茶色のぱっちりとした瞳は、人間の俺に興味津々といった様子でらんらんと輝く。
「…ふぅん…」
ハルカもまた、お互いに自分と違うところを探していた。
「キースの瞳、いいなぁ~、緑色だね!」
「そうか?」
「ねぇ、キースの着てる白い、服…?珍しいね?」
「…あぁ、これは砂避けのローブで…」
「…砂避け…?」
きょとん、とハルカは聞き返した。
「…あぁ、いや…」
自分が記憶喪失だという設定を思い出し、言葉を濁す。
首を傾げ俺の返答を待つハルカに、笑顔を作ってこの場を誤魔化す。
妖精…。
人間の少女じゃないか?
羽根…
羽根なんて、背にもどこにも見当たらないのだ。
「…ハルカ、俺も聞いていいか?」
何?と俺をあどけない表情で見つめた。