記憶 ―夢幻の森―
「さっき言っていた、妖精の『羽根』はどこにある?生えていないように見えるが…。」
異世界から来た俺には見えないのか…?
そうハルカの体を見回していた。
「やぁね、普段は見えないの。魔法を使うと背中に出るの、透明の七色に輝く羽根。」
「…そうなのか。」
七色に輝く羽根…
俺は今すぐに確認出来ないことを少し残念に思う。
見てみたいもんだ…
きっと、綺麗に違いない。
「…羽根が、気になるの?」
「あぁ…」
俺は、はっとしてハルカを見た。
やはり心配そうに、真意を確かめるように俺を見ていた。
「いや、違うんだ。見てみたいってだけで…。妖精は初めて聞く人種だし、実際に会えるなんて初めての体験だしな?ただの興味だ。傷付けたりしないから、警戒しないでくれ。」
俺は珍しく焦って、いつも以上に口を動かしていた。
「初めて…?あ、そっか。記憶喪失なんだもんね?」
「そ…そうだ。」
妖精はこの世界では珍しくない当たり前の存在なんだろうか…。
分からない事だらけで、誤魔化せば誤魔化す程に、…苦しくなる。
「何度も疑ってごめんね?」
ハルカはそう謝った。
謝るのは、俺の方だ。
申し訳ない気持ちで一杯だ。