記憶 ―夢幻の森―
4・妖精の里 フィネル
4・妖精の里 フィネル
俺は彼女たちに導かれ、妖精たちの里へと進んでいる。
ハルカは赤いランプを揺らしながら、俺たちの先頭を歩いた。
まだ当分花畑なものだから、ハルカにきつく叱られたコンは彼女の怒りをなるべく避けるように俺の後を歩いている。
結局…
俺は『記憶喪失』を突き通して、なぜコンの言葉が分かるのかは曖昧にした。
まぁ、実を言えば、
『前世の人間時代に、長い時を狼として過ごした為に動物の言葉が分かる』
…のだが、信じまい。
「そのランプ…綺麗だな…」
ゆらゆらと揺れるランプを目で追いながら、俺は口を開いた。
赤く透き通る硝子。
硝子の内部に散らばる空気の泡が、何とも味を出している。
中で点る火は、赤々と燃え、硝子を通して放たれる光は、周囲の虹色に輝く花たちに優しく馴染む。
『その火、俺が出したんだぞッ!』
コンが得意気に言う。
後ろを振り向けば、誉めろ、とばかりに下から俺に上目使いで視線を送っていた。
「そうか、偉いな?」
俺はくすっと微笑んだ。