記憶 ―夢幻の森―
コンはへへっ…と照れ笑いすると、翼を羽ばたかせ俺の視線の先に来る。
『俺な?ずっとハルカしか言葉通じなかったから実はちょっと嬉しいん…』
「このランプはねぇ~、私たちの里の工芸品なんだ。」
コンの言葉を遮って、ハルカが話し出す。
『…ヒドイ。』
コンがしょぼくれて、翼を力なく動かしながら再び地面を歩き出した。
「工芸品…?」
ハルカはそんなコンに目もくれず、前進しながら話し出す。
「そう、フィネルは“硝子の里”とも呼ばれているの。綺麗なんだから。キースも驚くよ?」
「へぇ…」
「ほらっ、見えてきた!」
ハルカが俺を振り返り、里の方向を指差す。
生い茂る木々の緑の光の合間から、違う色の光が漏れる。
ハルカは俺の手を取り、駆け出した。
『あぁ~!待てよぉ。』
青い虫たちに好かれて、じゃれ合って遊んでいたコンがそう叫び後に続く。
俺は少し不安だった。
俺は、受け入れられるだろうか…。
ハルカは笑顔で俺を迎えた。
それは、ハルカだからだろう。
あどけない少女だからこそ、だろう?
大人たちは、里に棲む人々は、どんな態度で俺に接するだろう。
しかし、
この繋がれた手を、拒否する事も出来なかった。