記憶 ―夢幻の森―
「城か…?」
「ううん、教会。建物自体が全部硝子なんだよ。ステンド硝子っていうんだって。」
ハルカが教会と呼ぶ建物の向こうからは、幾つもの月がステンド硝子を照らす。
教会の両脇には木々の自然な緑色の光。
俺はその神々しい光景に、何も言葉を発せずにいる。
「あたしのパパ、教会の牧師さんなの。家もあれの隣!」
行こ?と再び俺の手を引く。
「多分、今の時間ならパパもママも教会にいるから!会いに行こう?」
俺たちは真ん中の道を進んだ。
この世界は、
何なのだろう…。
俺の知る世界とは…、
俺の知る街とは、
大分違うんだな…。
紺色の暗い空に、
様々な…、
柔らかな「多色の光」――。
人々を照らす、光。
俺たちを見守る、光…。
俺は未だに『夢の中の幻』にいる様な…
これが『現実』だという事に、
戸惑いを隠せずにいた。