記憶 ―夢幻の森―
道を歩いていると、ちらほらと里の住民に会う。
こそこそ俺たちを盗み見ながら何かを話している。
ハルカが、こんばんわと挨拶する度に大人たちは愛想笑いをした。
やはり、人間の俺が気になるのだろう。
里に入るべきではなかったか…。
そう後悔し始めたところへ、親子連れがすれ違う。
幼い男の子が、ハルカに気が付くと指を差して言った。
「うわっハルカだ!縁起悪いもん見ちゃったぜ~ッ!」
「こ…こらっ!ごめんなさいね…」
母親は我が子の指先を手で押し戻すと、愛想笑いで謝った。
そくささと足早に子供を連れて去っていく。
ウゥ~…ワンッ!
『次言ったら噛みつくからなぁっ!ふざけんな、バーカ!バーカッ!』
コンが彼らの後ろ姿に、追いたてるように威嚇した。
「…なんだ?」
ハルカは悲しそうに、それでも懸命に笑って、
「…ごめんね?あたし嫌われてるからさ。あたしといたら余計目立っちゃうね?」
と強がって首を傾げた。