記憶 ―夢幻の森―
ハルカが?
嫌われてる…?
嘘だろう?
会ったばかりの俺には判断する材料は少ないが、そんな要因が何一つ見つからない。
ハルカは俺の返答も待たずに再び歩き出す。
その背中が少し震えているのが分かった。
手を引かれるまま歩く俺の頭に、コンが器用に乗った。
腹を俺の頭にベターッと密着させ、首を俺の耳元へと運ぶ。
ハルカに聞こえないように、こっそりと耳元で話した。
『いつもこうなんだ…。可哀想なんだ、ハルカ…。キースは友達だよな?』
俺は声を出せない。
ハルカに聞こえてしまうだろう。
さらにコンが乗っているので頭も動かせない。
その代わりに、もう一つの手でコンの頭を優しく撫でた。
俺は、コンが最初に俺に向かってきた事を思い出していた。
ハルカを守ろうと必死だった気の強いコン。
その裏には、普段のこういう事情が、コンにはコンの想いがあるのだ。
『一緒にハルカ守ろうなぁ?』
そう俺の肩に、尻尾をパタパタ振った。
俺はそんなコンを撫でながら、ハルカの背中を見つめた。
少し、アイリと重なる。
この子は、笑顔の裏にどんな辛い想いを抱えているのだろう…。