記憶 ―夢幻の森―
5・笑顔の裏側に
5・笑顔の裏側に
俺たちは、教会の隣にあるハルカの家に移動した。
丁度、夕飯時らしくハルカ一家に暖かく迎えられ、俺も一緒に食卓を囲んだ。
ハルカの父親、セイジさん。
彼は昔、迷いの森の向こう、人間の棲む街で人間の研究をしていた人間学者らしい。
俺を暖かく迎えたのは、その知識あってこその事だろうと思う。
ハルカがまだ幼い頃に、この里に移り住み、教会で牧師を始めたそうだ。
ハルカの母親、ユリネさん。
彼女もまた、人間相手に商売をしていて、そこでセイジさんと出会い結ばれたのだと話してくれた。
何とも明るい綺麗な人で、俺を見た第一声が、
「あらぁ…金髪美少年~っ!!ハルカ、ナイスッ!」
だった…。
間違いなくハルカの明るさは母親譲りだと思う。
そして、一人娘のハルカ。
ハルカが孵した犬竜、コン。
ワイワイと暖かな食卓。
幸せを絵に描くと、こうだろうか…。
砂漠時代に生涯独り身だった俺は、この光景に憧れすら抱いていた。