記憶 ―夢幻の森―
6・ユピテルの神話
6・ユピテルの神話
ハルカは窓を開けて、夜空を仰ぐ。
窓からは、心地よい澄んだ風が入り、俺の髪をくすぐった。
空には、月明かり。
俺の座る位置からも、窓からはこの住まいの隣にそびえ建つ、教会の偉大なる一部が仰ぎ見えた。
ハルカは、歌った。
それは、出会った時に耳にした、あの歌…
……
…
月夜の晩に
集める光
果てしない楽園へ
私を導くもの
生まれた意味を知る
時空を越えて
失われた
星の記憶を知る
…
……
その心地よい歌声に誰もが耳を傾け、ハルカが歌い終わると、ユリネさんの食器を洗う音がカチャカチャと再び響いた。
「…あの歌は?」
俺はセイジさんに聞いた。
彼は口に運びかけたカップを一拍止めると、
「あぁ…」
とだけ答え、再びカップを口に運ぶ。
「ユピテルの神話の一部だね。」
カップを置きながらそう言った。
「ユピテルの神話…?」
「あぁ、ハルカのお気に入り。この土地に伝わる神話だよ。明日、教会においで。本があるから…」
「あぁ、ぜひ…」
ユピテルの神話…
神話…
何か道標があるような、
そんな気がした。