記憶 ―夢幻の森―

一つ目は、
『怒りの心』を、

自分から一番遠くの空へ浮かべた。


二つ目は、
『憎しみの心』を…

三つ目は、
人々の為に生きる自分の『虚しさ』を。


彼は、次々と封印した。

しかし、次々と生まれてくる恐ろしい感情。


時は流れ、
第14の月まで創り終えた彼には、

世界で唯一愛する女性がいた。


彼女を想うが故に生まれてくる感情、
彼女にではなく、世界に向けられなければいけない愛情…

彼は世界の為に、
泣く泣く、

『彼女への愛』を封印した。

第15の月、誕生。



彼は、全ての月たちを見上げて嘆いた。

こんなにも、自分の心を空に浮かべても尚、
まだ、
自分には嘆く心がある。


この世界に、
『自分の心はいらない』


世界に『器』だけを残し、
「人々に幸あれ」そう言い残し、

最後に、
自分に残る、
『全ての心』を、封印した。


それは、
第16の月となる。

これまでで、
一番大きな『月』となった。


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