記憶 ―夢幻の森―

そして、
この世界に残されたユピテルの愛した女性が、彼を想い、歌ったとされる歌…

それが、あの歌だった。



月夜の晩に、集める光

果てしない楽園へ、
私を導くもの…

生まれた意味を知る

時空を越えて、
失われた星の記憶を知る



「…せつない神話だな…」

俺は、ぼそっと呟いた。

自己犠牲…

自分の感情を捨て、全ては世界の為に…


「せつねぇよな~。だから崇拝されてんだ、ユピテル。」

それは知らない男の声だった。
俺が顔を上げると、大きな荷物を背負った男が目の前にいた。


ウ~~…
『誰だよ、オマエッ!』

眠っていたはずのコンも男に向かい唸っていた。


「…この里の者か?」

知らずの内にそれだけ集中してしまっていたのか、全く気配を感じなかった。


「いや、俺はお前と同じ人間。旅行者、かな?森を越えて来たんだ。」

男は馴れ馴れしく、俺の隣に腰かけた。

金髪が目立つから、とユリネさんの計らいで俺は帽子の中に異世界の者である証を隠していた。

それが幸いしたようだ。


「珍しいな~?まさかこの地で同じ人間に会えると思わなかったよ~!」

男はそう言った。

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