記憶 ―夢幻の森―
茶色の髪に、灰色の瞳。
これが、この世界の人間か。
彼は俺の持つ本を顎で指し、言った。
「その本には書いてないけどな、続きあるんだぜ?知ってるか、少年!」
「…続きが?」
俺は、彼に向かって吠え続ける臆病なコンを自分の膝に乗せ、なだめながら聞いた。
悪い人間ではなさそうだ。
「興味あるのか?若いくせに珍しいな…」
「あぁ、教えてくれ。」
彼は俺に握手を求めた。
俺の手が、彼の手にすっぽりと覆われる。
この瞬間、自分が少年だという事を再確認させられた。
「嬉しいなぁ。俺は神話を追いかけて旅してるんだ。人間の街よりこっちの方が情報が豊富でさぁ!」
「へぇ、そうか…」
俺は静かに彼の話を聞いた。
それはあまりにも興味深いものだったが、牧師であるセイジさんが途中で顔を出し、彼の興味はそちらに向いてしまった。
俺への話も途中のまま、それも忘れられ、満足そうに挨拶し教会を出てしまった。
嵐のような人だ。
俺が聞けた話は途中まで。
それでも、充分か…。
『ハルカの羽根の事か?キース…。だからか!?』
コンが俺の膝で顔を見上げる。