記憶 ―夢幻の森―
「…あぁ、出来れば治してやりたい。」
『そうかッ!!じゃあ、俺も頑張るか?』
「…そうだな?」
神話の続きはこうだった。
ユピテルを想い続けた女性、エウロパ。
彼の封印した『彼女への愛』、
第15の月。
それを生涯高い山で仰ぎ祈り、
彼の面影を想い続けた。
現在――。
第15の月は『エウロパ』と人々に呼ばれている。
宗派によっては、『エウロパ』を女神と崇めている場所もあるらしい。
そして、
一つの伝説がある。
第15の月『彼女への愛』と、
第16の月『彼の心』が、
重なる時――、
彼女が生涯を過ごした山に、
『奇跡が起こる』
…そう伝わっているらしい。
その山がどこなのか、
どのような『奇跡』なのか、
詳細は聞けなかった。
しかし…、
これだけでも収穫だろう。
「コン、この山の場所を知っているか?」
まぁ…知らないだろうな、と思いつつ、駄目もとで訪ねてみた。
『俺を誰だと思ってるッ!知るわけねぇだろッ!!』
そう威張り散らし、黒い尻尾をブンブン振った。
「……だよな。」
セイジさんにでも聞いてみよう。
俺はコンを抱き上げ床に下ろすと、彼の姿を求め立ち上がった。