記憶 ―夢幻の森―
7・甘い蜜

7・甘い蜜



ハルカは、
あの花畑で、笑っていた。

赤い硝子のランプを揺らし、コンと笑い合いながら、足取りは軽く…。


それは、昨日と変わりなくて、
変わったのは俺の気持ちだけ。


昨日と同じ台詞で小瓶を取り出し、花の露をくむ。
その様子を俺は悲しみを堪え、ただ見ていた。



「あたしも一日中キースと遊びたかったな~!コンばっかり仲良くなってさぁ~!」

七色に光る花たちを背景に、ハルカは「ずるい」と足を道端に投げ出して座る。


『んあ!?なッ、仲良くしてないぞッ!俺はハルカが一番だぞ!なぁ?キース!』

それを俺に振るのか?と眉をひそめながら笑った。


「ははっ…、あぁ…そうだな?」


俺がハルカの横に腰かけると、言葉とは裏腹にコンが俺の膝に乗る。
どうやら俺の膝だけは、お気に召しているようだ。


「本当~?」

『ホントだぞ!キースなんて、神話の本ばっか読んで、ぜぇ~んぜんッ遊んでくんなかったぞ!』


「ユピテルの神話の本…?」

『そうだぞ!なんとかっていうキセキの伝説とかを調べててな?俺はぜぇ~んぜんッ、つまんなかったんだぞ?』

コンは、ハルカに嫌われたくないのか必死に彼なりに説明をした。

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