記憶 ―夢幻の森―
あぁ…
口止めするのを、
忘れていた…。
そうか…、そうだな。
コンは言うよな…。
素直が取り柄な奴だ。
ハルカが俺の意図に気付かない事を、祈るばかりだ。
「ふぅん?」
「…素敵な伝説だと思ってな?」
ハルカが首を傾げたので、ここぞとばかりに曖昧な言葉を並べた。
「…キース、何かお願い事があるの?」
ハルカはそう聞いた。
「あぁ…、まぁ…」
俺が言葉を濁すと、コンは楽しそうに話し出す。
『あのなッ?キースはなッ、キセキを起こして…、んぐ?んぐぐ~ッ!?』
悪いな…。
俺はコンの口の先を手で掴み、口を閉ざしてやった。
後で、ハルカのいない所でよく話し合う必要がありそうだ…。
素直過ぎるのも考えものだ。
「…何?なぁにぃ~?」
ハルカはそう催促し、コンは俺の手を必死で剥がそうと、もがく。
鼻息をあらげ、首を左右に振りながら、両手の肉球で俺の手を攻撃し始めた。
「…男同士の、…秘密だ。だよな!?コン?」
そう見つめる俺の剣幕に、コンはビクッと急に大人しくなり、首を縦に二回振った。
手を離してやると、
『…そ、そうだったか?そうだったかもなッ!?』
と弱々しく首を傾けた。