記憶 ―夢幻の森―
ざわざわ…
『おぉ、キース。ハルカと友達になったのか?』
樹のじぃさんはそう葉を揺らし、緑色の光を俺たちに降らせた。
青く光る虫たちも、まるで喜んでいるように辺りを飛び回った。
「あぁ…。じぃさん、ハルカを知っていたのか…。」
『うむ。花たちの露を貰って良いか、と承諾を得に来てくれてな。それからも度々訪ねてくれるのだ…』
そうだったのか?とハルカを見ると、コンを地面へ下ろしながら言った。
「だって、おじぃちゃんのお話楽しいもん!ねぇ~?コン。」
『んぁ!?あぁ…!楽しいぞッ!』
コンは飛び回る青い虫たちに夢中で、顔を右へ左へと目で追いながら答える。
「おじぃちゃん、キースがエウロパの奇跡のお話知りたいんだって!」
『キースが…?』
じぃさんは枝をしならせた。
つい昨日ひょいと現れた俺が、なぜそんな事を聞くのかと不思議に思っているのだろう。
「お願い事があるんだって!あたしには教えてくれないの…。お友達なのに…」
ハルカは、唇を尖らせ地面を見つめる。
その様子を気にしつつも、俺はじぃさんに訪ねた。
「奇跡の起こる山の場所と、その時を知りたい。」