記憶 ―夢幻の森―
『――アイリ、キースの帰り道を頼むよ。――』
あの…
『時の通路』での、
アズの台詞を思い出していた。
俺は、多分…
時が来れば、
この世界を去るだろう。
こんなに小さな体で、
今までどんな想いで、
ハルカは幾つもの夜を越えてきたのだろう。
きっと、
心配はかけまいと声も出さず、
この肩を小さく震わせて、
一人で枕を濡らしていたに違いない。
一体、
どんな別れ方なら…、
ハルカが、
悲しまずに居られるのだろうな…?
その時は、
いつものように、
あどけない笑顔でいてくれ。
今だけは、
ハルカが自分を嫌いだといくら嘆いても、
俺はこの手を離さない。
ハルカの涙を拭う為に、
きっと…、今この手がある。
俺は、
涙を流しはしないけれど、
ハルカが泣いているのなら、
一緒に泣いてあげられるから…
俺たちは、
「孤独」を分け合うために、
出逢ったのかもしれないな…?