記憶 ―夢幻の森―

まだ出来ると決まっていない。

治せる…と、
変に期待を持たせたくなかったんだ。

その期待は、さらなる悲しみに変わるかもしれないだろ?


しかし…
今、ハルカを泣かせているのは俺だろう。


「ハルカは誤解をしてるよ?」

俺はハルカを少し引き離し、涙に濡れる瞳を見つめて微笑んだ。


『…そうだぞッ!?キースは帰らないぞ!ハルカを置いて帰らないぞッ!』

「……?」

顔を上げたハルカを真っ直ぐに見つめる。


「俺の願い事、…ハルカを、治したいんだ。」

「……!?」

ハルカは大きな瞳を、さらに大きく開いて俺を見た。
コンも違う意味で、瞳を見開いていた。


『…男どーしのヒミツは!?自分が言うなら最初から俺に怒るなよなッ!!キースのバカ!バーカッ!』

涙を流しながら唸り、俺に向かってくる。
そんなコンを野放しに、罰を受けながら、俺は言った。


「…ずっと、俺はここに…。ハルカの傍にいるよ…?」


笑顔を誘おうとした言葉。

それは、
俺の願いでもあって。

嘘。

きっと、
『ついてはいけない嘘』
だった。


それでもハルカが笑ったから、今はこれでいいと思ったんだ。

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