記憶 ―夢幻の森―

俺は手にしていたスプーンを置き、一つ小さな溜め息をつく。

昔から…

自分の事を、周りに話すのは苦手だった。

自分の思いを、
わざわざ口に出す…
言葉にするのが、苦手だった。

しかし、
話さなくてはいけない。
伝わらない…



正直な思いを、
俺は、話し出した。


「俺は…、前にいた砂漠の世界で…罪を犯した。それに救いたかった大事な大事な仲間にも、俺は何もしてやれなかった。何も…出来なかった。」


「そう…。私が見た白い狼は、貴方なの…?」

ユリネさんが俺に訪ねた。


「えぇ…。長年、魔力で狼の姿でした。それで多分…、コンの言葉が分かる。」

そう答え、ハルカとコンをちらっと見た。
二人とも、ぽかんと驚きの表情を隠せずにいる。

どうやら、前世がどうの…より、俺が狼の姿だった事の方に驚いているようだ。


「その世界で、罪の意識と後悔と、自分の無力さを嘆いて生きてきた。」


そして、
今、現在も同じ。

これは言わないが…、

一生を終えても尚、
転生して、全てを忘れてしまうのが堪らなく恐ろしいのだ。

俺は、
自分で自分を縛りたいのか?


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