記憶 ―夢幻の森―
翌朝――
朝といっても、この世界は夜のまま。
微妙に紺色の空に輝く月たちの配置が変わっているくらいだ。
セイジさんは俺に一本の剣を持たせた。
腰にくくり付けると、昔の感覚が戻ったようで少し落ち着いた。
ユリネさんはハルカに小瓶を三本渡した。
じぃさんの所に行きがけに花畑で薬をくませる為の物だ。
そして、ハルカの腰に大きな斜め掛けの鞄をかけて言った。
「コンちゃんの御飯もちゃんと入っているからねッ!」
『おぅッ!』
一気に食べちゃ駄目よ?と無理をして笑った。
「ママ、心配しないで大丈夫だよ?」
ハルカは、
『初めての友達との遠出』
に少し嬉しそうに照れ臭そうに笑った。
そんな娘の様子に複雑そうな表情で、セイジさんは俺の肩に手を掛ける。
「無理は…しないでくれ。ハルカを頼むね?」
「二人とも、…いえ、三人とも無事に帰って来てね?」
ユリネさんが、コンを含めた三人に言い直して俺の隣で笑うハルカの手を取る。
「うんッ!行ってくるね!」
『俺も頑張るぞッ!』
そう無邪気に笑う二人の横で、俺は静かに頷いた。
セイジさんと熱い握手を、
ユリネさんと優しい握手を…、
二人と交わし、微笑んだ。