記憶 ―夢幻の森―
9・迷いの森
9・迷いの森
花畑で露をくみ、昨日のようにじぃさんの元へたどり着いた。
――ザァ…
そう昨日と変わらず葉を揺らした。
『おや、ハルカとコンも行くのかい?』
「うん!」
「…だ、そうだ…」
呆れる俺に構わず、じぃさんは言う。
『うむ、与えられるだけじゃ駄目だ。自分から動かなくてはのぅ?ハルカ…』
もしかしたら二人を止めてくれるかもしれない、そんな俺の淡い期待は裏切られ、心の中で小さく舌打ちする。
じぃさんは長く生きているだけあって、その言葉は最も正しいものであり、これ以上何も言えなくなった。
「エウロパの山は遠いのか?月が重なるのは、いつなんだ?」
『それが、明日の晩なんじゃ。本来は遠い場所。しかし間に合う…』
「……?」
俺たちは互いに首を傾げながら、じぃさんの話を聞いた。
聞き終えても、俺の頭の中は疑問符だらけだった。
ゥワン…
『キース、俺ぜぇーんぜんッ分からないんだけどもッ!?』
「…俺も、実は精一杯だ…」
はは…と乾いた笑いをコンに返した。