記憶 ―夢幻の森―
じぃさんが言っていた「泉」へは、さほど歩かずに着いた。
そこは、周りを木々に囲まれた透明な泉。
高い岩肌からは水が落ち、滝となっている。
その先へと続く道はない。
一周を見回してみても、行き止まりのように見え、俺は眉間にしわを寄せた。
「…この泉と、エウロパの山と、どう関係すると言うんだ?」
「ん~、分かんないね?…でも、綺麗な泉~!」
ハルカとコンは歓声をあげ、泉へと駆け寄る。
ハルカは泉の岸に座り込むと、手のひらで水をすくい、コンをめがけて水を降らせる。
『はゎッ!ハルカ、何すんだよぉ~ッ!?』
「あはは!コンはお水嫌いだもんね~?」
『ヤメロよぉ…。ヤダぁ~!』
コンはプルプルと体を震わせながら水を弾こうと必死になっていた。
「…ははっ…」
その様子に思わず笑みを溢しながらも、俺は諦めきれずに疑い深く泉の周囲を歩きながら辺りを見回した。
透明の水面は、月たちの明かりを反射し、俺の見下ろす角度が違う度にさらに輝いて見えた。
バシャバシャ…
と、さほど激しくもない滝の音が響く。
「…ん…?」
その音に違和感を感じて耳を澄ませた。
やけに、響き過ぎていやしないか?