記憶 ―夢幻の森―

「…やっぱりか。」

「キース?どうしたの?」

「道だ。滝の裏だ…」


滝の裏側には、人が一人、やっと通れる程の足場があり、岩と岩の隙間に細い道が続いていた。

この岩の道へ、音が反響していたんだな。
表からは、滝の水に隠れ全く気付かなかった。


「ハルカ、コン。おいで?」

俺は二人を手招きし、こっちへ来るよう促した。


「うん。待って…、……!?」

ハルカが立ち上がり、歩を進めようとしたその時、

水面が光を放ち、泉から水がゆっくりと穏やかに立ち上がる。


『なんだぁッ!?』

「…ッ!?」

俺は、すぐさまハルカに駆け寄り、ハルカを肩の影に隠す。


水は、
徐々に何かを型どっていく。


「コンッ!早くこっちへ!」

水柱を見つめたまま固まっていたコンが、はっと俺の声に反応を見せ、焦りながら俺の足元へ駆けてきた。


『…警戒せずともよい…』

水は、
人の形になっていた。


『…私は、この泉の精…』

精…?

「…この泉の精霊か?」

『…いかにも…』

俺の問いに、女の形をした水が、ふっと頬をゆるめた様に見えた。

しかし、俺たちは警戒心を解かなかった。

「試される」…
俺の頭の中は、そればかりだった。

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