記憶 ―夢幻の森―
「ダメだよ、コン!お水嫌いでも入らなきゃ進めないんだよ!?」
ハルカは地面に張り付き踏ん張るコンを、何とか説得しようと声を掛ける。
「…そうだ。仕方ないだろう?言われた通りにするんだ…。」
俺はそう言いながら、腰につけていた剣を地面に置く。
剣を体から離すのは、不安ではある。
しかし、入口はじぃさんが守っているし、ここには泉の精霊もいる。
他からの危険はないだろう…。
自分の服に手をかけ、上半身を風にさらした状態で再びコンをなだめる。
「…コン?諦めろ、男の子だろう?」
『イヤだッ!!水は無理ッ!俺の属性、火だもんッ!』
やれやれ…と溜め息をつき、俺は自分のズボンを脱ぐ。
ハルカを守ると言っていた勇ましい姿は、どこへいったのやら…。
「コン!諦めなって。水もだんだん慣れるって!」
ハルカは必死にそっぽを向くコンを見つめていた。
「ほらッ、少しはキースを見習いなさ……、…きゃぁ!」
ハルカは俺に目を向けると、そう叫び、自分の顔を覆う。
コンもその声に驚き、俺たちを見上げた。
「…どうした?」
「…な、なんで全部脱いでるの!?」
ハルカは顔を赤らめ、俺に背を向けてしまった。