記憶 ―夢幻の森―
コンは、始めは怖がって俺の肩に登ろうと何度も爪をかけたが、次第に水にも慣れたようで、
『ヨユーじゃぁんッ!』
と楽しそうに泳いでいた。
俺の次の難題は、
ハルカになっていた。
「…ハルカ?コンは入ったぞ?」
ハルカは泉に背を向けたまま、その場に座り込んでしまっている。
「…だぁって~…」
「…?」
『ハルカはなッ?裸が恥ずかしいんだぞ?』
コンが俺の傍で、ハルカに聞こえないようにそう言った。
「裸が?俺も裸だぞ?」
『だから余計になんじゃんかッ?シシュンキって、パパが言ってたぞ?』
「あ…」
…思春期か。
俺は昔を思い出していた。
カオスの泉で、
お互い裸で泳ぎ、笑い合っていた幼い少年少女。
いつの日か、
少年がそれを恥じ、少女に服を着て入れと諭していた。
いつの間にか、
お互いがお互いの性別を意識し、カオスの泉では「泳ぐ」という行為すらしなくなっていった。
俺は、ずっと横で、
その時の流れを、
微笑ましく見つめていた。
ハルカも、
…そんな年頃なのか…。
どうも俺には、
「親心」の様なものが強い。
しかし、
ハルカから見たら、
俺だって「少年」。
つまり、「男」か。