僕と君との境界線【BL】
教室の扉が開けられた瞬間、それまで、ざわめきに埋め尽くされていた教室が、見えない手によって口を押さえられたか――、あるいは、魂を抜き取られたか。
ただ茫然と、その瞬間が終えるのを黙って見ていた。
いや、見ているしかできなかった。
歩くたびに制服の裾がすれる音。
風と共に運び出される、花のような香り。
ふわりふわりと――、ゆらり、ゆらりと。
静かに時間が過ぎていくのに、その一瞬だけは永遠に思えた。
空間が止まり、肺に入るはずの空気が遮断されたかのように。
息ができない。
瞬きすらも忘れ。
僕自身の存在すらも忘れそうになった。