僕と君との境界線【BL】
史高君…?
気易く呼ぶなよ…、よく知りもしないのに。
桃井が僕の名を呼ぶ声が、懐かしくも耳元で響いた。
つい、最近まで桃井と話していたはずなのに、今はもう、遠い過去のように思えて仕方がなかった。
保健室で、桃井が僕にしたキスの余韻すら――…、夢のように、色褪せていくというのに。
「話したくない」
「じゃ、ここで話しても困らない?」
「なん…だって?」
戌井ユキは、僕の瞳を意味深に覗き込んだ。
僕の瞳は揺れていた。
怒りと、困惑と――…、桃井との事で。
「困るでしょ?」
「何を言ってるんだ?別に困りはしない」
「そうは思えないし…、私は、全部、知ってるの」