魔王のゲーム
愉しむプレイヤー
三つの口から吐かれる炎・氷・雷
人を簡単に殺せる、鋭利な牙や爪
きっと、俺は今は死線が近い状況にいる。
なのに、顔からは笑みが消えない。
俺はイカレてるのか?
多分、イカレてる。
だって、命を賭けたこの《ゲーム》が、こんなに愉しいと思えるから。
「ははっ」
口からこぼれる小さな笑い声。
それに応えるように、目の前にいる、頭が三つある人二人分くらいの大きさの犬《ケロベロス》が吠える。
まさか、最初の方のボスが雑魚モンスターとして現れるなんて……
《ゲーム》がさらに難しくなっている。
そう思うだけで、ゾクゾクする。
犬の真ん中の頭の一つが深呼吸をするように上を向く。
――来るっ!
その動作で、次に来る攻撃を先読みする。
と、同時に、俺は両手に握る剣を強く握り、走る。
ジョブ《両手剣使い》
防御を捨て、攻撃力が比較的に低い代わりに、スピード・反射力が早い、攻撃型のジョブ。
俺は持ち前のスピードで一気にケロベロスの懐に潜る。
「その攻撃は――」
地面を蹴り、宙に体を浮かせ、
「隙だらけなんだよ!!」
二閃。
ケロベロスの断末魔のような悲鳴と共に、真ん中の犬の頭と胴体が別れた。