【短編】HAPPY★VALENTINE
いつの間にか顎から優輝の手は離れて、代わりにあたしの手には、さっきの箱が手渡された。
「気に入るかどうかわかんねーけど……。」
そう呟く優輝の声を聞きながら、あたしは箱を開けた。
「あ………」
──────ダイヤのついた指輪……
「あたしが欲しいって言ってたやつ……」
人気のその指輪は、優輝とデートに言ったときに見たものだった。
「高かったでしょ?
こんないいやつじゃなくてよかったのに……」
あまりの高値で買えなかった指輪。
デートのあとに何度か見に行ったけど、すでにそれは売りきれてしまっていた。
その指輪が、目の前にある。