君と過ごせる最期まで
…チン
そんなレトロな音が、響く。
開いてく扉。それに伴って、ゆっくりと歩み進めた。
…足取りが重たい。
…稔が死んだ。…そんなの、嘘に決まってる。
病室に入ったら
『詩歌!』
って、笑いかけてくれるよね…?
509号室
その病室に入り、ゆっくりと…顔を上げた。
「し、い…ちゃん!」
…なにコレ。
…夢?
夢に決まってる。
「詩ちゃん…!」
…稔のお母さん、なんで泣いてるの?
…夢のわりにはリアルなんだけど…
「稔…!」
稔のお父さんまで…?
「…夢だ」
そう、夢だよ。
稔が息してないなんて、ありえない。