君と過ごせる最期まで
…触れられないことを、わかっているくせに。
触れられている感触があるわけでもないのに、ただ頭の上で手が左右に揺れているだけなのに…
胸に疼いていたなにかが次第に薄れていく。
そんなあたしは稔のことを…
好きすぎるのかもしれない……。
稔……
「ありがと…」
おばあちゃんに聞こえないように、稔の耳元で静かに囁いた。
『お、おぉ…』
珍しく素直なあたしに、稔は動揺したのだろう。
耳の裏を左手で掻きながら、稔は俯いている。
微かに見える耳が真っ赤なのは、気のせいじゃない。
稔特有の照れ隠しに思わず顔が綻んだ。
「詩歌ちゃん、そこに何かあるのかい?」
稔の様子を微笑ましく見ていたあたしに、おばあちゃんが不思議そうに言う。