君と過ごせる最期まで
無視して走り去れば当然通り抜けることができるだろう。なんせ、稔は触れることのできない幽霊なのだ。
…けど、あたしにはそんなことができないことを稔はよくわかっている。
「…聞きたくない」
『俺、知ってた…』
聞きたくないという、あたしの要望をまるで無視し、稔は淡々と話し始めた。
「聞きたくないんだってば!!」
『詩歌が…毎晩、泣いてること』
「聞きたくな……え?」
例え、耳を抑えていてもこんな近距離聞こえるに決まっている。
それでも、あたしは耳を必死に両手で押さえた。
…けれど、やっぱり意味はなくて。入ってきた台詞に自身の耳を疑う。
『…知ってたんだ。詩歌が泣いてること』
…そんなはずは、ない…
だって稔は…