君と過ごせる最期まで
そんなあたしとは対照的に稔は、どんどんあたしに言う。
『…俺、幽霊だから
詩歌に触ることもできねぇし』
あたしに触る仕草を見せる稔。しかしその手は寂しげにあたしの体をすり抜けた。
『もちろん、抱きしめることもできねぇ』
同様、抱きしめる仕草を見せる稔。…やはり、その温もりがあたしに伝わることはない。
サァーッと海ならではの潮の香りが混ざった風があたし達の間をすり抜けていく。
あたしはその寒さにブルッと身震いをした。
『…寒そうにする詩歌を温めることもできねぇ』
あたしから離れ、切なげに俯く稔。
「…稔」
やっとの想いで発せた声はなんとも情けないものだった。