君と過ごせる最期まで



「…稔?」



ケータイの画面に表示されているのは“生田稔”



…なんでだろう。



「出たくない…」



胸が異常にざわつく。



出ないでくすぶっていると、ケータイはピー…と留守電に切り替わった。



「…詩…歌…」



そう、苦しそうに…呟く稔の声。



プチッと切れる、留守電。



「…稔?」



確かに稔の声だった。



なんで、苦しそうにしていたんだろう…?なんて、疑問に思っていたら再びケータイは着信を私に知らせる。



表示されるのは、“生田稔”



震える手で、ボタンを押した。



「もし、もし…?」



遠慮がちに出した声。



それに対して返ってきたのは…



稔じゃなくて…



「し、いちゃん…?」



稔の、お母さんの声だった。



< 8 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop