君と過ごせる最期まで



『あの時…俺、自分で死ぬんだって自覚してた。けどな、頭にお前が浮かんだ瞬間、死にたくないって思って…まだ、お前に云ってなかったから』



「…稔」



『…結局はダメだったけどな。それでも俺、どうしても云いたくて。母さんが電話してるってのを感じて…詩歌になんとか伝えたんだ。……で、気づいたら詩歌の部屋にいたんだ』



…あの時だ。



…稔の苦しそうな声を電話越しで聞いたあの時。



稔の死亡時刻より後だったから驚いたのを覚えてる。



『…お前の傍にいれて、嬉しかった。出来るならまだお前と……』



今にも稔の目から溢れてしまいそうな涙。



なのに、その涙は決して頬に伝うことはない。



稔が…涙を見せまいと必死に堪えてるから。



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