うそつきなライオン
「今日はもう寝よ?」
「でも、お腹‥」
「すいてない。
…すいてないよ。」
千雨が優しく微笑うと、嘘も本当になる。
あたしはコクリと頷いて、ベッドに向かった。
当たり前のように千雨もベッドに入り、腕枕をしてくれる。
不思議と、ドキドキはしなかった。
むしろ安心した。
初めて会った人に、懐かしいと感じた。
「…俺はね、ジョーシキが嫌いなんだ。」
唐突に千雨が呟いた。
「常識?」
「ジョーシキがいつも正しいとは限らないのに、ジョーシキから外れた人間は白い目で見られる。」
首を倒して千雨の横顔を見る。
彼の瞳には、光が無かった。
「千雨‥は常識から外れた人間?」
千雨もあたしを見る。
「んん、ジョーシキから逃れたい人間。」
そう言って、千雨は少しだけ哀しい顔をして微笑った。