冥王の花嫁
走っている途中、ニンフたちに話しかけられた気がした。
だけど今はそんな事、どうでもよかった。


"お母様のバカッ……"



ただその言葉が頭の中でいっぱいで―――



「ハァッ、ハァッ―――
ここは何処かしら……」



しばらく走って、薄暗い森のなかに居ることに気が付いた。


「この島にこんな森などあったかしら……?何だか……何だかとても薄暗くて寂しい場所」


いつもは太陽のあたる、暖かく美しい花畑で遊んでいたので、こんな所があったなんて気付かなかった。


少し怖くなったが、今さら母の元に戻る訳にはいかない。


「――――もう少し奥へ行ってみましょう………」


いかにも怪しい森のなかに、自分から入っていくのもどうかと思う。
だけど…だけど誰かに呼ばれている気がして―――
体が勝手に動いていた――


少し歩いていくと、開けた場所へ出た。



「わぁ……とっても綺麗………」



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