思い出の味

転校生が来て1週間。
すっかり慣れた様子でクラスの何グループかはつばさのうちのレストランに食べに行ったらしい。

「俺昨日行って食ったけどマジうまかったよ。」
「俺も。ピザやばい。」

取り巻き男子が何かと大げさにほめる。
「ありがとう、みんな。すごくうれしい。」
つばさも笑顔でそれにこたえる。

「同じ料理関係でも、夢原の家とは天と地ほどの違いだよな。」

自分の名前がいきなり出て思わず振り返った。

「つばさちゃん、こいつんち惣菜屋やってんの。おしゃれさのかけらもない地味~な惣菜売ってるんだ。惣菜だけじゃなくて漬物とかそういう古臭いの。」
「べつに私が売ってるわけじゃないし。」
いらっとして反論する。

「あぁ夢原さんてなにか不思議な香りがすると思ったら漬物臭なんだ。」
「なっ・・・」

クラス中が大爆笑に包まれた。
「なによ、私漬物なんて触ってないんだから匂いがするわけないでしょ。」
「夢原さんはパパのお店来ないでね。イタリアンに漬物臭が漂ってたらやじゃない。」

クラス中の笑いが止まらない。
私は察した。

またあれが始まるんだと。
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