狼さんの好きな人
「何で謝るんだよ?」


「だって…」


郁斗の宝物を俺が奪ってしまったから…


「お前が気にすることねぇよ。小さい頃からひよりを気にしてたんだろ?それに、実際…ひよりを女の子として好きかと聞かれたら微妙なんだ。よくわかんねぇ。大切な妹には違いないけど。」


「そうか…」


「俺が望むことは、ひよりが幸せになってくれることだけだ。」


ひよこが生きていたら…


俺も郁斗みたいになっていたのかな…


幼い頃から入退院を繰り返していたひよこ…


俺は、ひよこの幸せなんて考えたこともなかった。


少しでも長く生きて欲しかった。ただそれだけ。


それは、俺の願望でありひよこの幸せに繋がるとは限らない。


『お兄ちゃん、夜が怖いの…。眠ったら、もうお兄ちゃんに会えなくなる気がする…。だから、一緒に寝て?』


何度、ひよこに言われたことか…


結局、母さんに止められて俺がひよこと一緒に寝ることはできなかった。


今、思うと…


一緒に寝てあげればよかった…


それが、ひよこの幸せに繋がるなら…。


.
< 146 / 411 >

この作品をシェア

pagetop