狼さんの好きな人
「別に迷惑じゃねぇから。もっと俺に甘えろって。それに、俺は病人の世話するの慣れてるし。」


「え…?慣れてるんですか?」


「あぁ。」


「でも…」


「でも、じゃねぇ!!お前、すぐ“でも”って使うよな。俺に気を使うな。ひよりが元気になるまで、泊まっていけ!!強制!!」


強制!?


「で…」


でもって言おうとしたら、モジャ男におもいっきり睨まれた。


…………怖い。


めちゃくちゃ怖い。


モデルルームのような綺麗な部屋に、鬼の形相をしたトーテムポールが一人…


いや、トーテムポールって一台っていうのかな?


いやいやいや…


トーテムポールは、木でできてるから一本だな。


「で、返事は?」


「わ、わかりました。お世話になります。」


深々と頭を下げると、モジャ男がギュッと私を抱きしめて優しく頭を撫でてくれた。


モジャ男の爽やかな香りが、鼻を掠めた。


落ち着く。


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