狼さんの好きな人
「でも…」


まだ付き合ってそんなに経ってないし…


「ほら、また“でも”を使った。人を好きになるって頭で考えることじゃねぇだろ。心で感じるモンじゃねぇのか?気がついたら、誰よりも特別な存在だったとか。」


心…?


特別な存在…?


お兄ちゃんや他の男の人にはドキドキしないのに、モジャ男だけはドキドキする。


集会がある時や、体育がある時はどこかにモジャ男がいないか無意識に探してた。


でも、モジャ男はトーテムポールだからすぐに見つけることができるんだけど…


見つけた瞬間、何だか嬉しかった。


モジャ男も私を探してくれているのかわからないけど、私と目が合ったら笑顔で返してくれるのが更に嬉しかった。


今まで無意識に人を探すことなんてなかった…


モジャ男が特別な存在で好きってことなのか…


「好きってことがわかったか?」


「はい、わかりました。私、枢が好きです。」


「上出来。」


モジャ男は、嬉しそうに微笑むと残りのお粥を私に食べさせてくれた。


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