狼さんの好きな人
「え…?」


「だから、中庭だよ。珍しく、枢が中庭に出てる。」


その子は、“枢”という単語に反応して急いで中庭を見るものの、枢一人じゃないことに気付いた。


あーぁ…


泣きそうな顔しちゃって。


「あの二人、ラブラブだよね。って、どうかした?」


こんなことを聞く俺って、Sなのかなぁ?


「あ、いえ…。お二人は、お付き合いされてるのですか?」


「うん、してるみたいだよ?枢が、強引に彼女にしたって言ってた。枢の初恋の女の子だし。」


「そう…なんですか…」


「うん。よく、八年間も片想い続けたねぇ。」


ま、それは俺もだけど。


枢は、諦めると思ってたんだけどなぁ…


「…………。」


「……もしかして、枢の事が好きなの?」


わざとらしいかな?


俺って。


「え…いや、その…」


その子は、とたんに真っ赤な顔になって俯いてしまった。


バレバレだよ。


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