狼さんの好きな人
途中、お線香とお花を買って数十分。


車は、山の中腹を走っていた。


たまに、“○○メモリアルパーク○㎞”と書かれた看板が立っていたのと、木々の隙間から海が見えていた以外は、信号も極端に少なく木ばっかりだった。


こういう所に来たことがないはずなのに…


何となく見覚えがある。


だけど、それは目的の場所に着いた時に確信に変わった。


メモリアルパークに着くと、先にモジャ男達が手桶とひしゃく、お花とお線香を持ってお姉ちゃんが眠るお墓に向かった。


その後を、ゆっくり追いかける私とお兄ちゃん。


やっぱり、ここに来たことがある。


沢山のお墓が規則正しく並んでいて、時折風にのって潮の香りがする。


モジャ男達が、一つのお墓に向かって手を合わせているところに近づくにつれ、鮮明に記憶が甦る。


『日向、ひかり…。すまない。ひよこを助けられなかった…。ひよこ、ごめんな?』


そう言って、お墓の前で泣き崩れるパパとママの姿…


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