狼さんの好きな人
その時の私は、誰のお墓なのかも知らなかったし何でパパとママが泣いていたのかもわからなかった。


それに、パパとママがあんなに取り乱すことなんて今までになかったから、そのお墓に少し恐怖を覚えた。


だから、お墓の近くまで行けなくて…


少し離れてパパとママを見てるしかなかった。


知らなかったとはいえ、お姉ちゃんのお墓だったのに…


手を合わせることもできなかった。


私って、なんて薄情なんだろう。


「……ひより。ひよこと一緒に、お前の本当の両親もここに眠ってるらしいんだ。」


お兄ちゃんは、そう言うとお墓に向かって手を合わせると目を閉じた。


私の、本当のパパとママもここにいるんだ…


「…そうなんだ。あのさ…」


「どうした?」


「私を暫く一人にさせてくれない?」


「…わかった。俺達、その辺にいるから。何かあったら連絡しろよ?」


「…うん。」


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