狼さんの好きな人
三人が離れて行くのを見計らって、私はお墓に向かって手を合わせた。


ここに、私の本当のパパとママとお姉ちゃんが眠ってるんだ…。


もう二度と、会うことも話すことも触れることさえもできない。


だけど、三人を少しでも感じたくて思わず手を伸ばして墓石に触れた。


その瞬間…


『ひよりちゃん、折り鶴の折り方教えてあげるから一緒にしよ?』


『ひよりちゃん、注射がんばったね。えらいね。』


『おうちの池に、たくさん鯉がいるんだよ?今度、一緒に見ようね。』


『早く元気になるようにがんばるから。そしたら、お外で一緒に遊ぼうね。』


忘れていたお姉ちゃんとの記憶が一気に甦った。


お姉ちゃんと私は、外見は全く同じ。


同じ顔に同じ髪型、同じ声。


だけど、性格が違っていた。


感情を表に出す私と違って、控えめでいっつも自分のことより私のことばかり心配してくれた。


私が、注射をされた時だって“ひよりちゃん偉いね”“頑張ったね”って…


自分は、右手をぐるぐる巻きに固定されて点滴してるのに…


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