狼さんの好きな人
私の返事に納得したのか、レンジ先輩はにっこり笑うと優しく頭を撫でてくれた。


「…ひより。ビブス持ってこい。」


いつの間にか、私のそばまで来ていたらしいモジャ男。


久しぶりに話し掛けられたと思ったら、声が低くてかなり不機嫌な様子。


こんな感じだったら、今日もまともに話せないんだろうな…


「…わかりました。あ!!」


そう答えたと同時に、ビブスを家で洗って部室に置いていることを思い出した。


しまった!!


練習が始まる前までに、ビブスやストップウォッチやスコアボードやスコアブック等は用意しておかないと、いざチーム戦をしようとした時に準備で時間を無駄にしてしまうからって前にモジャ男に言われていたんだった。


モジャ男のことばっかり考えて、マネージャーの仕事すっかり忘れてたよ…


「ひより?」


マズイ!!怒られる…


「すみません!!部室に、ビブスを忘れたんでダッシュで取ってきます!!」


モジャ男の顔を見ないまま、深く頭を下げると急いで部室に向かって走った。


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