狼さんの好きな人
「あの家政婦の言うことは気にするな。自分で見て感じたことだけを信じろ。ひよりは、枢の言い分は聞いてないんだろ?」


「ぅん。」


「別れるにしろ何にしろ、枢の言い分を聞いてから判断しろ。ひよりは、枢より家政婦を信じるのか?ひよこや、お前のことを悪く言うようなヤツなんだぞ?」


若い家政婦さんの、あの勝ち誇った顔を思い出した。


………はぁぁぁぁ。


「もう枢の家には行けない…。枢に、家に来るなって言われたし。無理やり家に行っても、若い家政婦さんが取り次いでくれそうにない…」


「来週の金曜日、枢に会いに行け。直也には、伝えておく。それまで、部活には来なくていい。冷静になって、自分の枢に対する気持ちを確かめてみろ。」


「わかった…」


それからというもの、学校で短い休み時間や昼休みや部活が終るまでの放課後は屋上のベンチに一人で座っている。


と言っても、昼休みは誰かしら私の隣に座っているんだけど。それは、お兄ちゃんだったりミド先輩だったりピンキー先輩だったり…


でも、決して私の邪魔はしない。


ただ、何も言わず隣に座って時間がきたら教室に戻って行く。


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